ヤーマンです。
暑い毎日が続きますが、みなさま体調お変わりありませんでしょうか?ポレポレタクシー石井です。
先日、とある女性の読者から「文章が固過ぎる」とのお声を頂戴いたしました。女性ウケの悪さは覚悟しておりましたが、やはり直接聞くと普通にショックです。このコラムでは「如何にアツく書くか」ということを最大のテーマにしてるんだぜ!と開き直る事でかろうじて正気を保っている2009年の夏です。
「さいきん洋食器集めてるんだよね〜。一番好きなの?やっぱりアスティエ・ド・ヴィラッドかなぁ〜♪ 1つ1つ手作りでアンティーク風の陶器の質感がたまらないの。安いものじゃないけど、自分へのご褒美って感じで少しずつ集めてるんだ★」って無理矢理女子におもねる発言してスイマセン!レゲエの話にギャグ入れろって言われても正直厳しいです。
いきなり閑話休題してしまいましたが、今回は全5回のシリーズを予定しているレゲエ概論の2回目。ついにルーツレゲエについて書かねばならない日がやってまいりました。あまりのプレッシャーに胃がひっくり返って口から出てきそうです。
触れたいトピックは山ほどありますが、限られた紙幅でもあり、個別のアーティストやプロダクション、例えば「リー・ペリーとブラックアークサウンド」とか「ジャック・ルビーとバーニング・スピアー」なんていうテーマにつきましては、追々それぞれに項を立てて書かせて頂きたいと考えておりますので、今回はあくまでも「レゲエ」サウンドの誕生から、特にリディムにおけるスタイルの変遷、そしてダンスホールレゲエに至るコンピュータライズド以前までの歴史を流れとして考察していければ、とこのように考えております。
まぁ難しい話ではありませんので、リラックスしてラムでも飲みながらお付き合いの程をよろしくどうぞー。
【ルーツレゲエの誕生とその盛衰】
前回コラムの最後で、「ルーツレゲエが誕生します。震えて待て!」などと大袈裟に書いたものの、あらゆる事物が往々にしてそうであるように、ロックステディからルーツレゲエへの「変化」もある日突然訪れた訳ではない。「レゲエ」には確かにそのサウンドを特徴付ける確固たるスタイルが存在するけれども、例えば構造的にはロックステディなのだが歌われている歌詞の内容の変化、あるいはリディムや和声構造、楽器の使用方法のゆるやかな変化、などによって1968年くらいから70年にかけてロックステディとレゲエの境界上には沢山の曲が存在している。それらはアーリーレゲエ、あるいはルードボーイ(rude boy:不良の意)レゲエ、UKでスキンズ達に愛されたレゲエという意味でスキンヘッドレゲエなんて呼ばれてもいて、そのスジの好き者達にとってもなお、曖昧なジャンルになっているようだ。 好きなら好きに聴けばいいという話に過ぎないのだが、その音楽をなにがしかの文脈で読み解こうとする場合、この時期の音源は十把一絡げには出来ず、1曲1曲、曲単位での検証が必要になる。こういう状況の中でやはり、「最初のレゲエ曲」という議論は古くから行われて来た。
「レゲエ(reggae)」という言葉が最初に使われたのは、スカの時代から活躍するコーラストリオ、トゥーツ・アンド・ザ・メイタルズ(Toots & the Maytals)の68年「Do the Reggay」であることが確認されている。「レゲエ」という言葉自体はそれ以前から「ぼろ、ぼろ布、口げんか、口論」という意味のスラングとして使われていて、このスラングが転じてタフな音楽スタイルを指す言葉になった、とする説が一般的。では果たしてその「Do the Reggay」のサウンドはどんなものだろう。
Toots & The Maytals - Do The Reggay
オルガンの使用方法などレゲエと呼ばれる要件を満たしている様な気もするが、まだリディム、特にベースラインとドラムパターンのコンビネーションにおいて未だロックステディのそれ、という気がするがどうだろう?「最初のレゲエ」と目される曲としては、ラリー・マーシャル(Larry Marshall)の「Nanny Goat」といった曲が挙げられる事も多いのだが、オレ自身は、これも「最初のレゲエ」と評される事の多いファウンデーションチューン、リー・ペリー(Lee 'Scratch' Perry)が68年に自ら制作・ヴォーカルを吹き込んだ「People Funny Boy」こそがライズ・アップ・オブ・レゲエである、という立場を取りたい。それはこんなサウンドだ。
Lee Perry - People Funny Boy
3拍目にアクセントをおくドラムスと2拍/4拍の裏打ちのリズムという基本構造は変わらないが、明らかにシャープで重くタフなリディムへと変化している。また、レコードから見つけてきたという赤ん坊の泣き声をコラージュした(方法論としてはサンプリングの元祖の1つだ)実験精神が、ダブも含めたその後の録音芸術としてのレゲエの発展を準備しているという点、あるいはこれ以前のペリーのボスだったジョー・ギブス(Joe Gibbs)への痛烈な攻撃だという歌詞の内容についても、70年代末にかけてメッセージを伝えるための手段としても発展していくレコードメディアのあり方を予見している点、なども高く評価したい。
この様にして、ロックステディからの跳躍を見せたレゲエのサウンドは、66年のハイレ・セラシエのジャマイカ訪問を契機に一般にも広く信仰を集める事となったラスタファリアニズムの精神性を燃料に注入しながら、70年代を駆け抜ける様に進化(深化)の度を強めていく。 ルーツロックレゲエの誕生だ。
以下では、特にルーツレゲエにおけるリディムの変遷を縦糸に、その歴史の流れを紐解いていきたいと思う。
リー・ペリーのアップセッターズ(The Upsetters)を経てボブ・マーリー(Bob Marley)のウェイラーズ(The Wailers)へと参加するドラマー、カールトン・バレット(Carlton Barrett)が開発したという「ワンドロップ」。これはロックステディから続くリディムの強化版として、1拍目にアクセントがなく3拍目をバスドラムとリムショットで強調するスタイルで、ルーツレゲエを最も特徴づけるリディムとなる。
70年代中盤には中国系ジャマイカンであるフー・キム(Hoo Kim)兄弟のスタジオ/レーベル「チャンネルワン(Channel One)」のハウスバンド、レヴォリューショナリーズ(The Revolutionaries)として誕生したジャマイカ史上最強のリズムセクション、スライ・アンド・ロビー(Sly and Robbie)のスライ・ダンバー(Sly Dunbar)が、激しく打ち鳴らされるリムショットや、マーチ風のドラムロールを多用した戦闘的なリディム、「ミリタントビート」(「ロッカーズ」とも)を開発する。
一説によるとこのリムの連打は機関銃の発射音をイメージしているという話もあり、まさにミリタント(好戦的)でレヴォリューショナリー(革命的)なリディム。こういった命名については、キューバ革命や、あるいは当時のジャマイカにおいて、マイケル・マンリー(Michael Norman Manley)の元で社会主義政党「ジャマイカ人民国家党(PNP)」が躍進を遂げていたことと絡めて語ることも出来ると思うが、それはまた別の話。機会があれば語ろう。
スライの発明したミリタントビートの展開型として、拍頭すべてにバスドラムを打ち込みハットとリムの刻みが表情を加える四つ打ちのビート「ステッパー」リディムは、その後90年代にイングランドで勃興することとなるニュールーツレゲエの生命線ともなる重要なリディム。オーガスタス・パブロ(Augustus Pable)の「Pable In Moonlight City」の固く打ち付ける四つ打ちのキックの音色を、あるいはウィンストン・ナイニー・ホルネス(Winston Niney Holness)=ナイニー・ジ・オブザーバー(Niney The Observer)の「mutiny」でまさにスライが叩くミリタントビートの完成型を聴いて欲しい。どちらも掛け値無し、正真正銘のキラーチューン。
Augustus Pablo - Pablo In Moonlight City
Winston Niney Holness - Mutiny
その他にも、バニー・ストライカー・リー(Bunny 'Striker' Lee)おかかえのアグロヴェイターズ(The Agrovators)初期のドラマーであり、ギタリストのアール・チナ・スミス(Earl 'Chinna' Smith)率いるソウル・シンジケート(Soul Syndicate)でも活躍した、カールトン・サンタ・デイヴィス(Carlton 'Santa' Davis)が考案したという、「ッチー、ッチー、ッチー、ッチー」とオープンハイハットを効果的に使った「フライング・シンバル」サウンドも70年代中期を彩ったリディムである。
レヴォリューショナリーズもアグロヴェイターズも、どちらにしろその中核はスライ・アンド・ロビーが担っていたのだが、ボブ・マーリーがインターナショナルな成功をおさめた後の70年代後半になると、レゲエ自体の世界的な認知度が上がる中で、例えばピーター・トッシュ(Peter Tosh)やブラック・ウフル(Black Uhuru)などに帯同して彼らが演奏で世界中をまわる機会も増え、その不在の期間を埋める様な形で78年に結成されたのが、ルーツ・ラディクス(Roots Radics)だ。
性急になり過ぎたミリタントビートをちょっとレイドバックさせるかのように、特にドラマーがスタイル・スコット(Style Scott)になった頃に完成を見た、ワンドロップスタイルをよりタイトに音数を減らし、3拍目にスネアをストンと落とすスタイルは80年前後のダンスフロアを席巻する。オレなんかは単純に「ワンドロップ」という場合にはこちらのサウンドを指すことが多いし、「ダンスホール」といったらこの時期のサウンドを指したい気もする。
彼らのタイトで隙間の多い空間的なリディムは、新興プロデューサーでありアーリーダンスホール期を牽引することとなる、ヘンリー・ジョンジョ・ロウズ(Henry 'Junjo' Laws)のレーベル「ヴォルケーノ(Volcano)」や、チャンネルワンを舞台に、キング・タビー(King Tubby)の愛弟子、サイエンティスト(Scientist)のダブミックスと抜群の相性を見せ、一時代を築く。
以下に挙げた「Joker Smoker」はジャー・トーマス(Jah Thomas)のプロデュースで、ルーツ・ラディクスをバックに、トリスタン・パーマー(Triston Palmer)が吹き込んだチューン。バニー・リーの元で8歳でデビューしたというトリスタン・パーマーも、このアーリーダンスホール期を代表するシンガーの一人。
Triston Palmer - Joker Smoker
リディムがシンプルでタイトになったことによりダブ(ヴァージョン)におけるトラックの抜き差しがより効果的に聴こえる様になった点。また、そのことにより80年代中盤に吹き荒れるコンピュータライズド革命の嵐、言い換えれば打ち込みの反復的なリディムトラックの隆盛に先行する形で、この時期、未だ生のバンド演奏において曲の構成・構造上の試行錯誤が既に開始されている点は、大変興味深い。余談になるが、ドイツのBasic Channelが運営するレゲエ再発レーベル「Basic Replay」が初期のダンスホールを盛んに再発しているのも、この観点からなのかなぁと密かに応援している。
80年代中盤以降のディジタルトラックに対して(この場合デジタルといっても電子楽器を使っているといった程度の意味)、それ以前のバンドサウンドをヒューマントラックと呼んだりするが、その意味においてジャマイカのメインストリームは一旦、一切のヒューマニティーを忘れ去り、歌われる内容も「スラックネス (slackness)」と呼ばれる下ネタや、「ガントーク (gun talk)」と呼ばれる暴力を誇示するようなものへと変わり、ラスタの精神性をも忘れ去ることで新たな時代を迎えるが、ここから先は今回のテーマからは外れる。
こうしてリディムやサウンドの変遷を縦糸に70年代を通したジャマイカ音楽史を語るうえで、最も太い横糸として触れざる終えないのはやはりボブ・マーリーの世界的成功だろう。しかしながら、今更オレがボブの偉大な仕事についてどーこー言ってもしかたがないと思うので、一点だけ。
それは、大ヒットした彼の一連のレコードが、クリス・ブラックウェル(Chris Blackwell)がイギリスで運営していたレーベル「アイランド・レコード(Island Records)」を舞台に発表された点だ。旧宗主国というその歴史的背景からジャマイカとの経済的結びつきも強く、また今もジャマイカ移民の第2・第3 世代が多く暮らすイギリスでは、スカやロックステディの時代から多くのジャマイカンミュージックが輸入され楽しまれていた。1959年設立のアイランドもそんな役割を担ったレーベルの1つだ。リー・ペリーの最高傑作でありダブのマスターピース「Super Ape」もこのレーベルを通して世界に紹介された。
ボブの歴史的名盤の誉れ高いレコード群におけるクリス・ブラックウェルの態度(ロック的なアレンジの導入などなど)について否定的な意見もあるだろうし、リー・ペリーが「クリス・ホワイトウェルは吸血鬼だ(クリス・ブラックウェルはジャマイカ生まれのイギリス人で、白人)」とこき下ろすように、ビジネス面でも必ずしも良い噂ばかりとも言えないアイランドではあるが、それでもやはりこのレーベルがジャマイカンミュージックに対して果たした役割は決して小さなものではない。そしてアイランドを始めとしたイギリスとジャマイカを繋ぐレーベル群が、70 年代中盤から徐々に本国とはまた違ったニュアンスで、独自の進化を遂げる事になるUKレゲエに与えた影響は計り知れないのだ。UKダブやラヴァーズロック、ニュールーツといったUKレゲエの系譜もレゲエというタペストリーを編み込む重要な横糸の一本なので、いつか機会を見てお話できればと思う。
またその他にも、例えばDJ(=トースティング)文化や、ダブ、サウンドシステム、ルーツレゲエを彩るシンガー達やレーベルの数々、プロデューサーの面々、といった魅力的過ぎる横糸の数々についても別項に譲り、今回は筆を置きたい。
という訳で今回はルーツレゲエと呼ばれる音楽の誕生から、そのスタイルの変遷を主にリディムの面から紹介してみましたがいかがだったでしょうか?正直、ある程度の分量で過不足なくレゲエを語るのは無理があるので、今後、回を割って多面的に考察してゆければと考えております。取りあえず次回はみんな大好き「ダブ」について語っちゃいます。
いつも通り、ご意見、ご感想、ご質問、励ましのお便りなどは全て、info[at]oip-label.comまで([at]を@に変えてコピペしてね!文中で紹介させていただく可能性もありますのでご了承ください)!ではまた、See Mi Ya!
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【今月の一曲】
ポレポレ的に注目しまくっているブリストルの新世代ニュールーツプロダクション、dubkasmのビッグチューン。これのダブをジャー・シャカがプレイして話題になったユニットです。先日アルバムも発売され、今後の展開も非常に楽しみです。
dubkasm feat. Lidj Xylon - Every Lion
http://www.myspace.com/dubkasm
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【参考資料】
●「ルーツ・ロック・レゲエ」鈴木孝弥/監修(シンコーミュージック)
●レゲエ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%B2%E3%82%A8
コメント (1)
今回記事中で「リディム」という単語をドラムパターン(あるいはドラムとベースのパターン)程度の意味で使用しておりますが、ルーツからダンスホールにいたるまでのレゲエ全般において「リディム」と言った場合は、主にバックトラック(オケ)全体を指す事が多い事を追記しておきます。
この辺の独特なレゲエ用語についても何となく解説していければと考えております。
投稿者: 石井タカアキ(a.k.a. PolePoleTaxi) | 2009年08月09日 00:26
日時: 2009年08月09日 00:26